包括的がんセンター長 岡本光順
埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンターは、2007年4月に「がん患者さんを取り巻く問題の全てに、多職種が複合的・包括的な医療を継続して提供する欧米の治療体制を日本で具現化する」という志を持って開設され、最高水準のグローバルスタンダードな医療を“患者中心”に提供することをコンセプトとして運営してまいりました。現在では、がんの診療件数は、国内全大学病院の中でトップを維持しています。
包括的がんセンターの基本理念は、①全てのがん患者さんに寄り添う ②最高水準のがん治療を提供する ③多職種による質の高い安全な治療と高いホスピタリティの提供です。その実現のために、全国の大学病院・がんセンターからがん治療に経験豊富な医師が学閥を排して集まっています。さらに、がん専門看護師・がん専門薬剤師など多職種が治療に関わることで、質が高く安全な医療を提供できるだけでなく、患者さんの日常での細やかな部分や不安・心配に配慮することにも努力しています。
がんは国民の二人に一人が罹患する病気です。しかし、がん治療は近年大きな転換期を迎えています。外科手術においてはロボット支援下手術が本邦でも本格的に開始され、当院においても保険収載されたほとんどのロボット支援下手術を実施可能としています。ロボット支援下手術は精密でクオリティの高い手術を可能とし、体に負担の少ない手術で患者さんの早期社会復帰が可能となります。また、免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする新規抗がん剤治療の開発が進み、治療成績の向上が図られてきました。当院では最先端の薬物治療を患者さんに提供できるような体制を整えています。さらに、「がんゲノム医療拠点病院」として、個々のがんの特性に応じたゲノム医療を患者さんへ提供し、“あきらめないがん治療”への取り組みもおこなっています。放射線・核医学治療においても最新の高精度治療機器を揃え、国内トップレベルの治療実績となっています。また、緩和治療だけでなく、がん治療に伴う様々な副作用・合併症・後遺症へのケアをおこなう支持医療への取り組みにも力を入れています。がん疾患と心の問題は切り離せません。当院ではがん患者への心のケアを精神腫瘍科の経験豊富な専門医が対応し、心の問題でがん治療が停滞・中止に追い込まれることがないようにしています。
包括的がんセンターでは、これからも地域がん診療連携拠点病院としての役割を果たし、”Your happiness is Our happiness.” という私たち埼玉医科大学が最も大切にしている価値観のもと、がん患者さんの期待にこたえる希望の光となり続けられるように努力してまいります。今後とも皆様のあたたかいご支援とご指導をお願い申し上げます。